2021年10月18日月曜日

10月18日(月)[池袋ミカド劇場]

海野雪妃(-)
工藤リナ(2)
漆葉さら(2,4)
坂上友香(1-2)
黒井ひとみ(1-4)
望月きらら(1-4)

 

武藤さんいらっしゃるということで、別件に用事もあったので行くことに。さすがに疲れてこの週は諦めるつもりだったが...結論からいえば、望月きららさんを見た過ぎて最後まで居残ってしまう。

 黒井ひとみさん。「えっちなあいどる」「飢餓海峡」「Black Lily」3個出し。話に聞いていた「飢餓海峡」は芝居仕立てのストリップ。人形振りからはじめて、黒井さんの一人芝居が物語を進め、性交シーンをストリップ的な見せ場に据えているもの。東北出身の自分にはどうしても引っかかってしまうイントネーションがあるし、率直に楽しめたかというと難しいのだが、ともすれば「踊り」に焦点化してしまう自分の目を「演劇」のほうにずらしてくれるという意味で、やはり黒井さんは特別な踊り子だと思う。
ストリップは服を脱ぐことだけがそのジャンルの本質であって、そこにどのようなジャンルが介在しようとよいわけで、演劇的なストリップの可能性を黒井さんやその他の踊り子さんが広げていくのに、好みの問題を越えて付き合っていきたい。まあ、ここで言っている「演劇」はずいぶん適当な言い方ではあるが...

 その点「Black Lily」はストレートな傑作だと感じる。設定・衣装・小道具・選曲のどれもがビシッとハマっている。略して「BL」とも表記されるこの演目が、同性愛の自由を言祝ぐ作品であることは言わずもがなだが、百合やBLといったジャンル的な想起がエンパワメントするヒューマニスティックな愛の自由を遥かに飛び去って、すべての性倒錯を開放するスケールを持っているとすら感じる。
それはビニールの無頭のトルソーが、見立てとして擬人的であると共に、ポーズベットのとき一緒にひょいと持ち上げられたりすることで、その軽さから単なる"もの"性が浮き彫りになり、擬人的な見立てがつかの間崩れてしまうことにもある。黒井さんが股間に舌を這わせるとき、それはあらゆるセクシャリティが対象であると共に、ビニールのトルソーそれ自体に欲望している可能性を考える。なぜなら「神様は何も禁止なんかしてない」のだから。この「何も」をこそ、文字通り受け取るべきではないだろうか。無限定の性の自由が、修道服の天国とボンデージの地獄の間に、高らかに肯定される。

 望月きららさん。天才。1回目「酔っ払っちゃった〜」は、小道具に酒が出てくる。すると当然、"酔ったから脱ぐ"という展開は即座に予想できてしまうわけだが、そうした予想は完全に的中しつつも、それに至るプロセスが記憶しきれないほどに豊か。あらゆる時間に「芸」の刻印が深々と刻まれていて、視線も客とのコミュニケーションも脱衣も、すべてに見どころがある。何より驚かされるのは、重機が駆動するようなポーズの切り方。ただ脚が宙に伸びるのでなく、支える足が体全体を起こしつつ、しかし一度沈んでからまた持ち上げるような、多段階の運動を行う。あれは一体なんなのか。

 3回目「Run the World」もM1から驚愕。黒と金を基調にしたド派手なヘッドドレスを装着しながら、ピンヒールブーツでガッツンガッツン踊り倒す。しかも、世界一有名な女性パフォーマーの音楽を使って...ギャグめいて本人は「スーパーボウルのハーフタイムショー」などと言うが、その"圧力"に関してほとんど見劣りしない。
きららさんは、小柄にも関わらず、信じられないほどヘヴィな質感のダンスをする。それは自身の胸の大きさやお尻の張りを完全に自覚的に武器にしていることにもよるだろう。かといって、線形の流麗さというか鋭角さもある。なにより踊る喜びがある。そして、その喜びがまた次の踊りを招いている。

 きららさんについては、様々に考えられることが多い。とりわけ、サービス精神が一秒たりとも休むことがないのに、「芸人」的なパーソナリティー特有の臭みが皆無なことだ。
自分は職業病的に、芸人の行為の"狙い"を敏感に感じてしまうし、それが感じられると一気にしらけてしまうこともあるのだが、きららさんが意識的に何かを仕掛けても、不遜な自信や慣れが本当に感じられず、けれども"天然"とかでもなく、これをなんといっていいものか非常にむずかしい。こんな人、なかなかいない。もはや天性の芸人肌と考えるほかない。

ミカド劇場はキャラの濃いお客さんが多い気がするけれど、この日は際立っていた。そんな中、ちょいちょい落ち着きなく中座していた酔っ払ってるおじさんがきららさんのポラ中に戻ってきて、事あるごとに笑っていたのだが「笑ってるけど、さっきおらんかったよな!?」「ぴったりの演目やってたんやけど?」「いや、いませんでしよね!?」と絶妙の間で何度もイジり倒していた。あれは真似できない... 

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